汎用機材使用レビュー
有機合成化学の研究室で必ず必要となる機材は各メーカーから販売されていますが、性能と価格が様々で新規購入の際は迷います。価格の安さだけで選ぶと、使い難かったり、安定して機能しなかったり、すぐに故障したりと、結局損をすることになります。こういった情報は人づて以外の方法で手に入ることはほとんどありません。多くの場合は安全策をとり、これまでに使用していた機材と同じ物を購入という選択肢をとります。このような背景から、参考までに研究室で使用している汎用機材について使用レビューを掲載することにしました。
1.マグネチックスターラー
2.エバポレーター
3.ダイヤフラムポンプ
4.分析用(0.1mg)天秤
5.乾燥機(低温・大容量)
有機合成化学の実験では多くのガラス器具を取扱いますが、部屋のスペース、器具保管場所、そして予算は限られていますので、ガラス器具を巧く使い回します。当研究室での使用済ガラス器具の取扱は、非水溶性有機物をアセトンなどで洗浄して除き、流しで洗剤洗浄し、少量のアセトンですすいで大半の水を除いた後、低温乾燥機に入れて最低30分以上乾燥という方式を取っています。1日数回、所定時刻に全てのガラス器具を乾燥機から出して所定場所に片付け(学生当番制)、乾燥機内のスペースを開放します。この方式の利点は、大容量の高温乾燥機が不要(高価格)、ガラス器具取り出しが素手で可能(手軽)、にあります。急ぎの場合はアセトンですすいでドライヤー乾燥となりますが、全てのガラス器具に行うことは現実的でなく、その際に落として破損、アセトンの使用量削減、という予算に関わることを考慮して現在の方式となりました。
そこで必要な大容量の低温乾燥機ですが、保温性はそれほど必要ありませんので、以下(1)や(2)のような低価格(15〜20万円)の乾燥機でスペック的に充分となり、後は機種選択の問題となります。
(1)アズワン・スーパードライングシェルフ DS-S-AS+迅速乾燥装置 DS-QD(2018年購入)
※購入1年後, 2019年1月記述
(2)のトラブル発生をきっかけに、2018年1月に購入して使用開始。シェルフ下部に温風発生装置を取り付け、そこから自然対流でシェルフ全体を温める低温乾燥機です。(2)のように、筒状送風管でシェルフ格段に送風しないので、これで乾燥できるのか?と不安でしたが、容量と予算等からこれ以上の類似機材も無く、購入決断。使用したところ、多少乾きにくさは感じるものの使用上の支障はありませんでした。欠点を挙げるとすると、カーテンが固くて開閉し難い(保温性と交換)、各段の網目幅が大きすぎる(別途網を使って対応)、連続運転がタイマー設定に限定され90分と短い(安全性と交換)、というところです。1年間使用した結果、総じて満足しています。
各機材は別売りなので、迅速乾燥装置が壊れた場合はそちらだけ交換することが可能です。「迅速乾燥装置を他のシェルフへ流用できるか?」を考えている人もいるかと予想します。私はトライしていませんが、純正セットの取り付け方法から可能と思います。まず純正セットの取り付け方法ですが、フックが付いた上部カバーと迅速乾燥装置をレールで取り付け、これをシェルフの枠にフックで吊り下げます。重心がシェルフ外に向くので、それを上部カバーの支え金具(出っ張り)がシェルフ柱に当たることで垂直固定になります。純正セットは上部カバーと支柱間の長さが揃えられているので、これでOKです。他のシェルフに流用する場合、支えの部分に前から後ろまで棒か板を挟めばきれいに設置できると思います。ただし、シェルフ容量が大きければ当然温風のパワー不足が予想され、周囲カバーに隙間があるような状況だと熱が逃げて乾燥効率が低下します。純正セットの周囲カバーは隙間が最小限で、厚みにより保温性を確保していますので、この点は巧く設計されていると感じました。
(2)池田理化・ドライングシェルフ SK-II LN(2002年購入)
※2019年1月記述
シェルフ上部に温風装置を載せ、そこから筒状の送風管を通してシェルフ格段に送風する低温乾燥機です。2018年1月まで15年以上、メイン乾燥機として働きました。その間、温風装置内部の筒状ファンの騒音が激しくなったので分解してグリスを塗る、熱源トラブルによる部品交換修理、などに対応して使い続けてきました。買い換えのきっかけは、前述の「筒状ファン」をモーター軸と固定するゴム部品が完全に割れ、風を発生することができなくなったことです。製品は製造終了で交換部品が無かったので、割れた「ゴム部品」をエポキシ系接着剤で固める応急処置により使える状態にしましたが、放置稼働できない状況ですので、現在は主にガラス器具保管庫として使っています。トラブル等ありましたが、長い間よく働いてくれた機材でした。
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