ユビキタスグリーンケミカルエネルギー
連携教育研究センター
本センターは平成28年4月より「グリーンケミストリー連携教育研究センター
(Cooperative Education and Research Center for Green Chemistry)」から「ユビキタスグリーンケミカルエネルギー連携教育研究センター(Cooperative
Education and Research Center for Ubiquitous Green Chemical Energy)」に名称を変更しました。グリーンケミストリーの概念に基づいて生み出されるエネルギーに関連する知識の普及と底上げを図りつつ、これを専門とする技術・研究者の養成に努めることや、すでに科学の様々な分野に携わっている人に対してもグリーンケミカルエネルギーに関する最新の話題を広く紹介していくことを目的として、引き続き、以下の6つの事業を展開します。(センター長・俣野善博)
化学は現代社会を支える科学技術の基盤の一つであり,持続可能な社会の形成には,自然環境への影響が少なく,人体にもより安全な化学と化学技術を創出していかなければならない。この考え方に基づく化学,すなわちグリーン・サステイナブルケミストリー(以下,グリーンケミストリー)の推進は,現代の化学分野における最重要課題の一つに位置づけられている。新潟大学理学系化学分野(以下,理学系化学分野)では,グリーンケミストリーと密接に関連する「自然環境改善を指向した新しい化学システムの開発と応用」,「環境と調和した革新的物質変換法の開発と新機能物質の創製」と「低環境負荷社会を支える新しいエネルギー変換化学の構築」の三つのプロジェクト計画を立て,それに基づく様々な研究を推進してきた。これまでに,個々の研究についてはかなりの実績を蓄積してきたが,今後は,互いの研究・開発を相補い,その相乗効果によって基礎および応用研究の新たな展開を生み出す必要がある。
従来の化学研究は専門的分野に深いが,狭い領域の研究に向かう傾向が強く,また化学全般の多様な分野の研究者が一つの目的に向かって共同する例は稀であった。そこで,化学の基幹分野である分析化学,無機化学,有機化学,物理化学分野のみならず,近年の化学研究の学際化により益々重要となっている生物化学分野と物質材料化学分野を専門とする研究者が実験および理論の両面から研究に取り組むことが重要であると考えた。そのような取り組みは,異分野間の連係によるグリーンケミストリーの共同研究のテストケースとなるものであり,新たな研究展開と成果が期待される。また,これらの研究を通した学部および大学院学生の教育により,持続可能な社会実現に向けた環境と調和した化学と化学技術の構築に携わる人材育成が可能となる。
持続可能な社会形成に向けたグリーンケミストリー構築のためには,各分野およびレベルに応じた理解と知識,技術の習得が肝要である。そこで,理学系化学分野では,本学の学部および大学院学生に対して,その分野およびレベルに応じた内容の授業を提供する取り組みをはじめた。すなわち,グリーンケミストリーに基づく学部および大学院連携の授業システムを立ち上げ,その発展による専攻横断型教育プログラムの構築を目指した取り組みであり,これは新潟大学アクションプラン2009に採択された。今後は,既設授業科目の充実化と新規科目の開設へ向けた検討が必要である。また,理学系化学分野では,これまで長期に渡り,一般の人々に対してもグリーンケミストリーの意義を説明していくことの重要性を認識し,高大連携事業や公開講座等を通して高校生や一般市民に対してもグリーンケミストリーを紹介・解説する機会を作るよう努力してきたが,この経験と実績を踏まえて,さらに組織的な活動を展開することが重要である。
これまでに,本学化学系教員の間では共同研究等は行われていたが,今後は研究と教育の両面において部局を越えたさらなる連携強化が重要となる。新潟大学の化学系教員の情報交換や意見交換を目的に,H18に理学系化学分野が中心となって,“新潟大学グリーンケミストリー懇話会”を立ち上げ,連携形成の環境づくりに努めてきた。今後は,この流れをさらに進めたい。
上記の研究,教育,および知識普及の活動をより発展・展開していくために,組織的な仕組みが必要と考え,本センターの設立を起案するに至った。
グリーンケミストリー連携教育研究センター(Cooperative Education and Research Center for Green
Chemistry)
グリーンケミストリーおよびサステイナブルケミストリーは国際的に認知・定着した用語である。我が国における,この運動の拠点組織「グリーン・サステイナブルケミストリーネットワーク」では,グリーン・サステイナブルケミストリーを正式名称,グリーンケミストリーは通称としている。本事業を推進するセンターの名称としてグリーンケミストリーを用いているが,その中にはサステイナビリテイ(持続可能性)の考えを包含している。
本事業では,「高感度・高精度な無機・放射化学的環境分析法の開発と評価,および潜在的な環境汚染源の探索と汚染の事前防止を目的とした環境に 優しい新規な化合物(生分解性の錯形成剤など)の開発とその応用」,「環境と調和した物質合成の基礎となる高効率・高選択的反応,触媒反応,および省エネルギー型反応の開発と,それに基づく有用機能物質(生理活性物質や分子デバイスなど)の設計・合成・機能発現」,「来るべき低環境負荷社会で中心になる新しい水素吸蔵燃料電池,次世代原子炉,有機太陽電池における要素技術となることが期待されるエネルギー変換化学,光生命科学的過程に関わる新システムの構造・ダイナミクス・機能」を目指した研究を推進する。
本事業メンバーによって推進されている「高効率・高選択的グリーン合成法の開発と生理活性物質合成研究プロジェクト」,「第4世代・トリウム溶融塩炉の溶媒設計」および「ビルドアップで拓くナノスピン科学」はH21新潟大学プロジェクトに採択され,さらなる発展を目指す。その他の学内外研究者との共同研究も継続して推進する。主な学外共同研究機関:(国内)理化学研究所;日本原子力研究開発機構;高エネルギー加速器研究機構;高輝度光科学研究センター,東北大学,北陸先端大学,千葉大学など;(国外)英国オックスフォード大学,仏国パリ第6大学,米国バージニア工科大学など。
上記1,2の研究プロジェクトの成果発表及び学習セミナーを通して,教員及び大学院生間の情報交換を行う。また,学外の最先端研究者による講演会を開催する。
既設(H20)のGコード科目「グリーンケミストリー入門」の充実化,Sコード科目「グリーンケミストリー概説」の新規開設(H22),を行う。また,専攻を跨がる大学院科目の開設準備について,他部局化学系との協議を行う。
高大連携事業や市民公開講座などを通じて,グリーンケミストリーについての知識普及に努める。センターホームページを開設し情報発信に努める。
本事業に参加している工学部化学系教員を窓口に,まず工学部化学系との研究および教育の連携を進める。また,教育学部化学系教員もメンバーに加わっており,今後さらに他部局化学系教員との連携を進める。また,“サステナビリティ(持続可能性)“をキーワードに化学系以外の本学他部局教員との連携の可能性についても模索する。
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