実験器具の工作(書ける内容は複数ありますが時間的な余裕次第です)
1.ガラスTLCプレートカッター(2020.8.29~公開)
TLCプレートには種類があり、ガラス板、アルミ板、プラスチック板、紙、が一般的に入手できますが、有機化学の研究室では発色剤使用と加熱処理ができる、ガラス板、もしくはアルミ板、の二択になると思います。私は前述の4種類、全て使った経験があります。アルミ板は普通のカッター(こだわる場合は裁断機)でもカットできますが、丁寧にカットしてもある程度の確率で表面のシリカゲルが剥がれるのが難点でした。プラスチックと紙は発色剤使用と加熱処理にかなり制限を受け、UV検出が基本であり、発色剤使用はヨウ素程度というのが大きな欠点です。
研究室では、裏面からもスポットを確認できるガラス板(低感度化合物に効果的)を使っていますが、欠点は専用のTLCプレートカッターが無いと綺麗にカットできない点です。ネットで検索すると数種類ヒットしますが、それぞれ結構な価格のため、研究室に無い状態から新規導入するにはハードルがあります。現在は関東化学が販売している大成化光株式会社の製品を使っています。
関東化学販売(大成化光)ガラスTLCカッター
こういう状況の下、学生実験でTLC分析を行うにあたっては、専用のTLCプレートカッターを購入するほどの予算的余裕は無く、使用頻度もかなり少ないことから費用対効果も低く、そこで素人でも問題無くカットできる紙のTLCシート(富士フイルム和光純薬:クロマトシートⅡ)を使ってきました。ただ前述したように、発色剤が使えないため検出はUVランプにほぼ限定され、実験テーマ自体がUV感度が良い化合物合成に制限されます。一時期はアルミ板の使用も考えましたが、学生実験の学生がカットすると高確率で表面のシリカゲルが剥がれるのが目に見えていたので、取りやめました。
ですが最近、安価なペン型ガラスカッター(実際には価格はピンキリです)を使ったガラスTLCプレートカッターが市販されているのが目に留まり、相変わらず結構な価格ですが、この方式ならば自作できると判断し、今回、ガラスTLCプレートカッターを自作してみました。極力作業工程は減らしています。
①材料
・塩ビ板,300×300mm,1mm厚,×1(\348@ホームセンター)
・塩ビ板,300×300mm,2mm厚,×1(\478@ホームセンター)
・塩ビ角棒,1000×6×12mm,×1(\249@MonotaRO,送料別)
・塩ビ角棒,1000×10×12mm,×1(\399@MonotaRO,送料別)
・ペン型ガラスカッター(トラスコ TGC-01,1-3mm用,\1,409@Amazon)
カット済塩ビ板
カット済塩ビ角棒
ペン型ガラスカッター(トラスコ TGC-01,1-3mm用) ※画像はAmazonから
※丸刃・非オイル式,好みに応じてダイヤモンド刃でも可
②工作機材
・アル助(アルミ製直尺)
・カッターのこぎり
・プラスチックカッター
・ペン型ガラスカッター(トラスコ TGC-01,1-3mm用)
・THF(塩ビ接着剤)
・カッターマット
工作機材一式
③作成手順
(1) 1mm厚の塩ビ板(300×300mm)をプラスチックカッターでカットします。
15mm幅×2,28mm幅×1(長さ調整のため,この後不要)。
(2) カットした15mm幅の板2枚を、上下間隔202mmほどで接着(THF)し、「ガラス板カット下敷き」を作ります。
(3) 2mm厚の塩ビ板(300×300mm)の上に、(2)で作成した「ガラス板カット下敷き」を載せ、その上下に1mmほど余裕を持たせ、カッターのこぎりでカットした塩ビ角棒(6×12mm)を接着します。「ガラス板カット下敷き」が無理なく左右に動けばOKです。
(4) (3)で接着した塩ビ角棒(6×12mm)の上に、上下の長さに合わせてカッターのこぎりでカットした塩ビ角棒(10×12mm)を、上下に2本、橋渡しで接着します。位置は右端から5cm、2本の間は6mm(塩ビ角材を挟んでいます)としました。これがペン型ガラスカッターを上下に走らせる際、左右位置を固定するレールとなります。
(5) ペン型ガラスカッターの先端を通し、上下移動がスムーズか確認します。初回作成では1mmほど左右に余裕を持たせましたが、実際の使用具合で幅の調整を行います。
(6) 余った塩ビ角棒(6×12mm)を、「上下 5cmのTLC板をカットする際のペン型ガラスカッターの位置」に合わせた長さにカッターのこぎりでカットし、レールの間に挟むことで、ペン型ガラスカッターのストッパーとします。
(7) 研究室内に金属直尺が余っていたので両面テープで貼り付けて目盛としました。実際にガラスTLCプレートを置いてカットします。
(8) 流石に関東化学販売(大成化光)ガラスTLCカッターのように、真っ直ぐガラスに傷は入らず、完全な直線カットはできませんが、学生実験なら許容できます。ペン型ガラスカッターを
5cm走らせる程度でしたら気になりませんが、20cmだと慣れが必要と思います。
(9) そこで、ペン先とレール幅をギリギリまで狭めるため、ペン先にテープを巻いて幅を調整しました。
(10) これでカットしたところ、調整前よりかなり良くなりました。20cmカットも問題無くできそうです。
学生実験で実際に使用してみるのは2021年の予定です。追記できる内容がありましたら更新します。