有機化学実験
現在、学部3年向けの有機化学実験を担当しています。毎年少しずつではありますが、市販実験書の内容やネット上から得られる他大学実験の内容を参考にし、テーマの新規開拓と、所有している実験器具と設備への適応化を行っています。
これまで扱ってきた実験テーマを掲載します。一部反応スキームと簡単なコメントがあります。
1.フリース転位から香料分子合成
・香水「Insolence」に含まれるNerolione合成
・2段階目の反応は窒素雰囲気下で撹拌
・2段階目の反応後はクロマト精製
2.Diels-Alder反応
・「フィーザー/ウィリアムソン有機化学実験」に掲載の実験テーマに少し内容を追加・変更
・シクロペンタジエンの熱分解蒸留が時間を要し面倒(スタッフで当日蒸留・低温保管に運用切替)
・再結晶精製がメインであり結晶生成の様子が学生実験に最適
3.ベンゾイン縮合
・「
フィーザー/ウィリアムソン有機化学実験」に掲載の実験テーマに少し内容を追加・変更
・異性化反応は窒素雰囲気下で還流
・NMR測定による立体化学の決定
4.メントール合成
・Synthesis (1978, pp.147-148)に掲載の反応
・原料は試薬会社から購入の光学活性シトロネラール
・1段階後の精製は簡易水蒸気蒸留
・1段階後の生成物にはある割合で異性体が混ざる
・2段階目の反応は水素雰囲気下で撹拌
・2段階後に得られるメントールには1段階目由来の異性体が混ざる
・文献記載の異性体比を参考に混合物の比旋光度測定から光学純度を決定
5.鈴木カップリングによる液晶合成
・観察しやすい温度範囲で固体~液晶~液体に変化する液晶分子の合成
・Grignard試薬の調製と反応は窒素雰囲気下で撹拌
・空気中室温で速やかに進行するカップリング反応
・最終生成物はクロマト精製
・融点測定器を用いて固体~液晶~液体の状態を観察
6.ジベンザルアセトンの合成
・Org. Syn. (1932, pp. 22-23)に掲載の反応
・英文実験項に従って実験
・大きな良質結晶が得られる再結晶の練習実験
7.菊酸の合成
・1段階目の反応は窒素雰囲気下で撹拌
・1段階目の反応後はクロマト精製(TLC発色剤処理が必要)
・NMR測定によるジアステレマー比の決定
8.香料化合物(Levistamel)の合成
・香水「Rochas Man」に含まれる「Levistamel」合成
・2段階目の反応はFriedl-Crafts反応の知識の応用
・3段階目の反応後はクロマト精製
9.BINOLの合成
・2-ナフトールからラセミ体合成
・L-メントールエステルの再結晶による光学分割
・比旋光度測定で光学純度の決定(文献値調査を含む)
10.有機触媒(プロリン)を用いる不斉合成
・J. Am. Chem. Soc. (2000, pp. 2395-2396)に掲載の反応
・オルト、メタ、パラニトロベンズアルデヒドから反応
・反応後はクロマト精製
・比旋光度測定による光学純度の決定(文献値は記載されている論文を配布)