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Syntheses, Properties, and Catalytic Activities of Metal(II) Complexes and Free Bases of Redox-Switchable 20π, 19π, and 18π 5,10,15,20-Tetraaryl-5,15-diazaporphyrinoids
K. Sudoh, T. Satoh, T. Amaya, K. Furukawa, M. Minoura, H. Nakano, Y. Matano
Chem. Eur. J. 2017, 23, 16364-16373. DOI: 10.1002/chem.201703664

Redox-Switchable 20π-, 19π-, and 18π-Electron 5,10,15,20-Tetraaryl-5,15-diazaporphyrinoid Nickel(II) Complexes
T. Satoh, M. Minoura, H. Nakano, K. Furukawa, Y. Matano
Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55, 2235-2238. DOI: 10.1002/anie.201510734



 ポルフィリンは18π系をもつ芳香族化合物として知られていますが、その1電子還元体や2電子還元体は不安定であり、通常空気中で取り扱うことはできません。今回、我々は、テトラアリールポルフィリンの向かい合う二つのメソ位が窒素原子で置換されたテトラアリールジアザポルフィリノイドを簡便に合成する手法を確立し、20π、19πおよび18π系をもつ誘導体を、いずれも空気中で安定な固体として単離することに成功しました。 また、得られた化合物の構造、吸収特性、電気化学特性、磁気特性を系統的に評価した結果、メソ位への窒素原子の導入によりポルフィリンπ系の電子状態が大きく変化することが明らかとなりました。さらに、2電子酸化還元反応を利用して芳香族性と反芳香族性を可逆的に変換できることや、酸素分子を補助酸化剤とするGrignard試薬の酸化的ホモカップリング反応の触媒として振る舞うことを見出しました。得られた結果は、テトラアリールジアザポルフィリノイドが電子やホールのキャリヤーとして高い潜在力をもつことを示しており、現在さまざまな誘導体の合成と物性評価を行っています。

Nitrogen-Bridged Metallodiazaporphyrin Dimers: Synergistic Effects of Nitrogen Bridges and meso-Nitrogen Atoms on Structure and Properties
M. Kawamata, T. Sugai, M. Minoura, Y. Maruyama, K. Furukawa, C. Holstrom, V. N. Nemykin, H. Nakano, Y. Matano, 
Chem. Asian J. 2017, 12, 816-821. DOI: 10.1002/asia.201700204.



 我々は、これまで共有結合で架橋されたジアザポルフィリン二量体の研究を進めてきましたが、今回、ジアザポルフィリンのニトロ化、還元、クロスカップリング反応を経由して窒素で架橋されたジアザポルフィリン二量体を合成することに成功し、架橋部位がπ系全体の構造や吸収特性・電気化学特性に与える影響を詳しく調べました。その結果、アミノ架橋二量体は分子内電荷移動特性に由来する強い吸収帯を持つこと、ピラジン縮環二量体は高い電子受容性を持つことなどが明らかとなりました。得られた結果は、ジアザポルフィリンの吸収帯を長波長化する手法としてβ位への窒素官能基の導入が有望であることを示唆しています。現在、医療増感剤への応用を見据えて水溶性ジアザポルフィリン誘導体の合成を行っています。

Effects of Counter Anions, P-Substituents, and Solvents on Optical and Photophysical Properties of 2-Phenylbenzo[b]phospholium Salts
Y. Koyanagi, S. Kawaguchi, K. Fujii, Y. Kimura, T. Sasamori, N. Tokitoh, Y. Matano, 
Dalton Trans. 2017, 46, 9517-9527. DOI: 10.1039/C7DT01839H 



 2-フェニルベンゾ[b]ホスホールは、リンで架橋された剛直なスチルベン骨格を持ち、発光材料の母核として注目を集めています。今回、我々は、数種類のカチオン性化合物(ホスホリウム塩)を合成し、その発光挙動を詳細に調べました。その結果、2-フェニルベンゾ[b]ホスホリウム塩の発光強度が、対アニオン、リン上の置換基、溶媒に依存して大きくかわることを見出し、その原因がカチオンとアニオンの解離平衡の起こりやすさに由来すること明らかにしました。得られた結果は、先のジチエニルホスホールの系と同様、カチオン性の電荷をもつ発光性材料の開発研究に重要な知見を与えると考えています。

Effects of Boryl, Phosphino, and Phosphonio Substituents on Optical, Electrochemical, and Photophysical Properties of 2,5-Dithienylphospholes and 5-Phenyl-2-thienylphospholes
Y. Koyanagi, Y. Kimura, Y. Matano, Dalton Trans. 2016, 45, 2190-2200. DOI: 10.1039/C5DT03362D 



 ホスホールとチオフェンがそれぞれのα位で連結された分子”ジチエニルホスホール”は、近年、蛍光発光材料の母核として注目を集めています。しかしながら、その発光量子収率は必ずしも高くはありませんでした。今回、我々は、ジチエニルホスホールの末端にボリル基、ホスホノ基、あるいはホスホニオ基をもつ誘導体を初めて合成し、いずれも高い発光量子収率を示すことを見出しました。また、イオン性の化合物であるホスホニオ基で置換された誘導体の発光強度が、対アニオンの種類や溶媒に依存して大きくかわることを見出し、その原因がカチオンとアニオンの解離平衡の起こりやすさに由来すること明らかにしました。得られた結果は、広くカチオン性の電荷をもつ発光性材料の開発研究に重要な知見を与えると考えています。

Comparison of 2-Arylnaphtho[2,3-b]phospholes and 2-Arylbenzo[b]phospholes: Effects of 2-Aryl Groups and Fused Arene Moieties on their Optical and Photophysical Properties
Y. Matano, Y. Motegi, S. Kawatsu, Y. Kimura
J. Org. Chem. 2015, 80, 5944-5950.  DOI: 10.1021/acs.joc.5b00541



 芳香環と縮環したホスホール誘導体の多くは、その剛直性に由来する高い発光特性を持つことが知られています。今回、我々は、鈴木ー宮浦反応を利用して、ベンゼン環あるいはナフタレン環と縮環した2-アリールホスホール誘導体を効率よく合成する手法を確立し、得られた化合物の発光特性を系統的に評価しました。その結果、縮環している芳香環およびα位に導入されたフェニル基のパラ位の置換基がπ系全体の発光特性に大きな影響を与えることが明らかとなりました。特に、ジフェニルアミノ基やジメチルアミノ基を有する誘導体が励起状態で高い電荷移動特性を持ち、大きなストークスシフトと高い発光量子収率を示すことを見い出しました。得られた結果は、ドナー=アクセプター型構造をもつ縮環ホスホールが発光材料の母核として極めて優れていることを示唆しており、ホスホールを母核とする高効率発光性分子の設計指針を提示できたと考えています。

Optical, Electrochemical, and Magnetic Properties of Pyrrole- and Thiophene-Bridged 5,15-Diazaporphyrin Dimers
S. Omomo, Y. Maruyama, K. Furukawa, T. Furuyama, H. Nakano, N. Kobayashi, Y. Matano
Chem. Eur. J. 2015, 21, 2003–2010.  DOI: 10.1002/chem.201405482.



 ジアザポルフィリンは、ポルフィリン環の二つのメソ炭素を窒素で置換した化合物の総称です。今回、我々は、ピロールあるいはチオフェンで架橋されたジアザポルフィリン二量体の合成に成功し、架橋部位となるヘテロール環がπ系全体の吸収特性や電気化学特性に与える影響を詳しく調べました。その結果、いずれの誘導体も可視〜近赤外領域にヘテロール(HOMO)からジアザポルフィリン環(LUMO)への分子内電荷移動特性に由来する強い吸収帯を持つことが明らかとなりました。また、電解酸化やESR測定により、ジアザポルフィリンπ系の電子スピンがヘテロール環を介して効率よく非局在化することを見い出しました。得られた結果は、ジアザポルフィリンの吸収特性を制御する手法として『ヘテロール架橋』が有望であることを示唆しており、これらの知見を基に、医療への応用を見据えて水溶性ジアザポルフィリン増感剤の開発研究を進めています。



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